「なくてはならないアクセント辞典」

ナレーターの仕事道具として、アクセント辞典は必携です。
私の知る限り、NHK出版と三省堂、2か所から出ています。放送業界ではNHK出版のものが多用されているようで、私もNHK出版のほうを使っています。(旧版は電子手帳に内蔵され持ち歩きにも便利でした。スマホアプリにもなっていましたよね。)

※ちなみに私が初めて買ったのは三省堂「新明解日本語アクセント辞典」でした。(複数選択肢があるのも知らずに本屋さんに行き「これでみんな勉強してるのか…!」と笑)三省堂は同業仲間のあいだで「東京アクセント寄りらしいよ」と言われていましたが、もちろん標準アクセントと大きく違うわけでもなく、使い勝手もよかったという印象です。

※もうひとつちなみに三省堂はWeb辞書(大辞林)からもアクセントが調べられます。言葉の横に数字が付いており、[0]=平板、[1]=頭高、[2][3]等で中高…などとアクセント位置がわかります。

標準的なアクセントは、時代とともに変化します。
NHKのアクセント辞典も昨年(2016年5月)大改定され「NHK日本語発音アクセント新辞典」として生まれ変わりました。(その前の改定、白表紙から緑になったのが1998年。時の流れをひしひしと…)

大きな流れとしては、平板化への許容。

  • 「ユーザー」は、旧版で「ユーザー」一択だったのが、第2アクセント「ユーザー」が追加に。
  • 「スピーカー」は、「スピーカー」一択から、第2アクセント「スピーカー」を追加。
  • 「キャラクター」は、「第1:キャラクター、第2:キャ/ラクター」だったのが
    「第1:キャ/ラクター、第2:キャラクター、第3:キャラクター」に。(個人的には頭高で使われる場面がちっともわからないです…)

カタカナ以外では、

  • 「化粧水」が、旧版「ケショースイ」一択が、第2アクセントとして「ケショースイ」追加。ちょっとホッとしませんか?
  • でも落語の「高座」は「コーザ」一択だったのが、第2に「コーザ」が追加。ああーこの平板化は抗ってほしかったかも。

ホッとする系では、つらい尾高&平板からの解放。

  • 「熊」は「クマ」一択だったのが、第2アクセントとして「クマ」OKに。
  • 「甘い」は「アマイ」一択だったのが、第2アクセントとして「ア/マイ」も追加。
  • 「賃貸」に至っては旧版「チンタイ」一択が訂正され、「チンタイ」一択に。ホッ!!

など。
ずいぶん変わりました。編まれた方々の仕事を考えると頭が下がります。
※新辞典のアクセント表記は、音の下がり目に\記号をつけるのみとなっています。(平板は ̄記号。)このコラムの表記ではパッと見てわかりやすいかな?と下がり目のほかに上がるところにも/記号をつけています。慣れている方には邪魔な表記ですがご容赦ください。

しかし。実際の仕事ではアクセント辞典にさからうこともしばしば。業界内で耳慣れた特有アクセントもありますし、エンドクライアントのご判断が最終的な正解、という着地は制作あるあるかと思います。
自分のやり方としては、複数選択肢があるものは出来る限り例を挙げて質問をして、比較した末に決めていただくようにしています。時に「(どうしても勘違いしていらっしゃる…公の場に出すならこちらのほうが…)」とつらい瞬間もありますが、質問すればほぼ皆さん前向きに検討してくださいます。そんなときにも、NHK日本語発音アクセント新辞典は心強い友となってくれているのでした。

新辞典のまえがきに書いてありました。載っていないからといって「間違っている」「おかしい」と否定しているのではなく、「ある程度改まった場面」でも「多くの人に自然に受け入れられる」ものを示すように作ったのだと。

届けたい言葉が、素直に届くように。
違和感なく、伝わりやすくするためのアクセント基準。
自分の標準もあやしいもので、完璧ってなかなかむずかしいことですが、都度、基準を確認しながら臨むようにしています。

新辞典はボリュームアップして、価格もアップ。買い直したときは正直ちょっと震えましたが(笑)これ無しではまともな仕事ができません。
ぜったいに、必要な、道具なのでした。

[オフィスあるこナレーション音声制作] 運営兼ナレーター 木場本和枝

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