株主総会のナレーション収録

株主総会向けナレーションサンプル、少し手入れをしたのでご紹介です。

今年は動画版仕立てに。
4名分、ダイジェストとして並べました↓

YouTube[あるこチャンネル]より
(動画の出来についてはわたくし素人がやっているのでご笑納ください…)

 

近頃は、株主総会をネットでライブ中継したり、当日の録画をホームページに掲載することも多いですよね。
議決権行使も電子投票で、と遠隔での参加も増えるなど、いまやネット経由のコミュニケーションを充実させることは必須。

株主総会にむけて、企業は株主とより円滑な関係が築けるよう、わかりやすい資料、接遇も居心地よく、・・・と準備をされます。
それをネットで広く公開するということは、総会当日をしっかり全うするだけではなくIRコンテンツとしてもアーカイブされていく=残して見せていく役割も加わってきているわけです。

「事業報告の部分はプロのナレーターの音声を使う」、これには”聞き取りやすく” “理解しやすく” かつ(万が一の読み間違いも防げて)”議事進行がスムーズに” というメリットがあります。

これが、その先も公開し続ける”作品”でもあると考えると・・・
印象を大きく左右する”は、ますます大事になってくると思うのです。(汗が出てきます笑)

 

ナレーションでいうところの”いい声”は、単に声がステキ、ということではありません。
要点が伝わる読みができているか
コレ大きなポイントです。
要点をズレて表現してしまうと、どれだけカッコよく、それっぽく読んでも、中身は伝わりづらく、聞かされているほうにもモヤ~っと不快さがうまれてきます。

逆に、大事なところをうまく伝えられていると、聞いている人に、内容がスルスル入っていく。長い文章なのに、テロップを見せられてるかのように要点が伝わってくる読み方、もしくは、まるで箇条書きに変換したかのように聞こえてくる読み方。
これができていると、(おぉ、上手い)となるわけです。
骨組みをとらえる努力をしているかどうかは、伝わる力に表れちゃうんですね…

正直、それっぽいだけで、中身が伝わりづらいナレーターだったら、プレゼン上手な社員さんが読んだほうが伝わる場合もあるのではと思います。いや本当に…。

ただし伝わりやすさの要素は、このほかに、”声色“や”発声法“、”滑舌“、”正しいアクセント“なども絡んできます。
ここの出来が不十分だと、「あれ?」「なに今の」「なんか変」「あ、また」と聞き手の流れが止まる原因になります。内容以外のことが気になる=そのぶん内容に向かい合えない、ということですので、邪魔ポイントを自ら作らないよう、ナレーターはもろもろ訓練や勉強を重ねているわけです。

ちなみに以下は、昨年、業務日誌に書いたものですが・・・↓
https://office-aruko.net/works/update/20180614

株主総会向けのナレーションは、あれこれナレーターチェンジするよりも毎年決まった人に依頼したほうが勝手がよかったりします。
事業内容の紹介、業績の報告、という内容において 「これはなんて読むんですか?」などそのたびに説明し直すのも大変ですし。不肖わたくしも、数年来、担当している企業様が。

自分としては、昔、転職をして初めてのアナウンサー業がラジオNIKKEI(当時はラジオたんぱ)。株式市況中継や経済番組アシスタントを担当し、その後、顔出しのフリーアナ時代は日経CNBCやテレビ東京の株式番組に出ていたことから、業績紹介に出てくる用語には目が慣れています。
ちょっとしたことではありますが、経験の有無は、正直、読みに表れると感じています。ナレーター選びの際には、硬め長文の経験値、会計用語に免疫のある人がおすすめです。
(まったく別畑の方でもわかりやすく読めることもありますけど。アクセント指示などの手助けが要るかな?)

 

ナレーター選びの際には、硬め長文の経験値、会計用語に免疫のある人がおすすめ。これを繰り返しお伝えしたいと思います。

加えて、音声の質も、伝わりやすさの一要素になります。
ザーザーしたノイズの多い音、マイクから遠い声、ボリュームが均一ではない音、息継ぎノイズなどを適切に掃除していない音。
プロスタジオで録れば問題はありませんが、ナレーター個人からのデータ納品では、これらは”できていない”ことのほうが多いかもしれません。(わたしの経験上ですが…)

[オフィスあるこナレーション音声制作]では、運営代表であるわたしがダブルチェック体制をとる形で、収録内容(読み方の正誤確認)、音声の掃除&仕上げを行なっています。ご安心を。

 

◆株主総会の事業報告向けにナレーターをお探しの方は、
[ボイスサンプルページ]でチェックしてみてください。
https://narration.office-aruko.net/voicesample.html

◆ナレーション料金は[料金表]のページに明示しております。
納品日程はお問合せくださいませ。

◆[お問合せはこちらから]
https://narration.office-aruko.net/mailform.html

 

※当収録サービスは、ナレーション音声のみの扱いになります。
動画制作から依頼できるところを探していらっしゃる場合、IR系に精通した制作会社さん(当方の取引先)にあたってみることもできます。どうぞお気軽にお問合せください。

 

[オフィスあるこナレーション音声制作] 運営兼ナレーター 木場本和枝
https://narration.office-aruko.net/

2019年は、にせんじゅーきゅーねん?にせんじゅーくねん?

あけましておめでとうございます!
2019年、よりお役に立てる存在を目指して、力を尽くしていく所存です。
・・・ということで
元日から、肩をぶるんぶるん回してコラムをひとつ。

『2019年は、にせんじゅーきゅーねん?にせんじゅーくねん?』

CMで。店頭の販促音声で。採用動画や製品紹介、業績発表で。
さまざま制作物の中で出てくると思われる「2019年」。
これ、「にせんじゅうきゅうねん」「にせんじゅうくねん」、どちらで読んでいますか?
また、正解ってあるのでしょうか?

・・・結論を先に言うと「どちらも正しい」です。
ただし、参考として、NHKの指針にならっておくのも大切かと思います。

NHKの放送基準では「ニセン・ジュー・クネン」を基本とし、
場合によっては「ニセン・ジューキューネン」も許容、としています。
(参考/NHK放送文化研究所 2017年3月1日公開Q&A
(NHK日本語発音アクセント新辞典の助数詞付きアクセント一覧表でも、原則「くねん」、許容で「きゅーねん」となっています)

実は、わたしの個人的な感覚としては「きゅーねん」のほうがしっくりくるんですよね。
「く」より「きゅー」のほうが音が前に出るし、聞き間違えない感じがするので。

ちなみに「7」も、個人的にはモヤッとしています。
たとえば「17年」。NHKでは「ジューシチネン」が基本、場合によっては「ジューナナネン」でもいいでしょう、とされています。
が、わたしは「11年」と聞き間違ってしまいそう(「シチ」と「イチ」の母音かぶり)なので、「じゅーななねん」のほうが好きだなーと感じています。(滑舌的には「ななねん」のほうが舌力は要るんですけど…)
ただこの感覚は、自分の仕事歴によるところも大きいかもしれません。もとの出身がラジオ、さらには経済・株式番組という分野を担当し、株価などの数字読みなどは「聞こえ間違い防止」をなによりも最優先していたからです。(103円は「ひゃくまるさんえん」、5002円は「ごせんとびふたえん」でした。ここまでいくと特殊慣用すぎ汗)

しかし、繰り返しますが、どちらでも間違いではないです。
NHKでは、広く、わかりやすくを念頭に審議した結果、「にせんじゅーくねん」を基本にしてるんだよね、とふまえた上で、「くねん」と「きゅーねん」どちらにするか決めればよいのだと思います。

あっ、
付け加えておくと
数字だけを言う場合は「2019=にせんじゅーきゅー」「17=じゅーなな」が基本です。

助数詞「年」がつくときは、古くからの慣用に従って「く」で読む「にせんじゅーくねん」を優先しましょうか、ということになっているわけで。
日付の助数詞「19日」は「じゅーくにち」、時間の助数詞「19時」は「じゅーくじ」など。一択で「く」と読みますよね?

このように数字単体なのか、単位が付いているのか、で変わります。
イベント名「○○フェア2019」などは「にせんじゅーきゅー」でいきましょう。

ともあれ、ご依頼の原稿の中で「2019年」が出てきたら、どちらの読み方にしますか?と確認させていただきますね。

ということで。2019年も、どうぞよろしくお願い申し上げます。

[オフィスあるこナレーション音声制作] 運営兼ナレーター 木場本和枝

「読み手へのフィードバックを大切にする 。」 【校了連絡】

今回は内側の話です。
ご依頼をうけて、内容確認、収録、納品、ご検収OKのちに料金精算をしてひとつの案件が終わります。
通常、いわゆる外注という立場で仕事をすると、ナレーターは「読んだら終わり」がほとんどです。無責任という意味ではなく、「読む」工程を担当するのが仕事なので、それで終わる、そりゃそうでしょ、という感じです。
Web納品の仕事であれば、音声データを送れば終わり。

しかし、これは個人差があるとは思いますが、収録後(または納品後)に
「あの仕事、どうなったかなー」
「どういう仕上がりになったんだろう?」
「修正の録り直しがくることはあるんだろうか?」
と思いをはせるのは、ナレーターあるあるなのではないかと思います。

完全フリーランスで直接依頼を受けている場合は、発注者側から「あの仕事、無事に完成しました」と教えてもらえることもあるかもしれません。また、ご検収OKをいただいた時点で(よかった、修正再録はないんだな)とわかります。
一歩踏み込み型のナレーターは、事後を知りたいですと自分から申し出たりしています。

一方、事務所や受注代理店を経由している場合は、ほぼ「読んだら終わり」です。
クライアントさんから「今回は本当にありがとうございました。思った以上のものが作れました!」とホットなお礼を頂戴しても、それがナレーターまで伝達されることはまずありません。言い方は悪いですが、仲介者がちょっぴり嬉しい気持ちになってそれで終わりです。

全方向コミュニケーションを大事にしている仲介者(事務所マネージャーや受注代理店)だと、もしかしたら事後も制作担当に食らいついて、完成状況を調べ、嬉しい声をいただいた場合はプレイヤーにも伝えてくれているかもしれません。ただ、それは普段プレイヤー側からコミュニケーションをとっていないと、ただの受け身の人に手取り足取り世話する連絡なんてしないのではないかと思います。

わたしは個人として、宅録業者とも長らく取引をさせていただいてきていますが、いずれも検収完了になったかはわからずじまいです。かといっていちいち質問もできません。
(すごいところでは検収以前に、発注依頼のメール1通以外、各種返信は一切なし、録音データを送っても受け取り連絡も何もないところもあります。これはその会社さんの自由だからいいのですが、行き違いでミスが起こらないよう祈りながらこなすことになります。)

 

このようないろいろな立場での経験をふまえて、オフィスあるこナレーション音声制作では、提携ナレーターへの校了連絡を「工程のひとつ」に加えています
(ここでいう校了とは、制作物の完成ではなく、お客様の検収が完了した段階です。)

「クライアントさんからチェックOKが出ましたので校了連絡です」
シンプルなメールで、長々と制作物について語るわけではありませんが、この一報があるかないかは地味に大事だと思っています。制作の一員として。

そして、お客様から嬉しい言葉を頂戴したときには必ず、それも転記して伝えます
ほんの1~2行の言葉であっても、(役に立ててよかった!)と実感できるものは宝物なので。

自分の場合、ナレーション収録のあとは実は不安です。
自信満々の人もいると思います。不安なものでお金をもらうのか、という考え方もあります。
しかし、いいか悪いかを判断するのは「相手」です。だからそこで「いい!」と喜んでいただけるのは本当に嬉しいのです。
反応の声を本人が知ることは大事なこと。つくづく思います。
事実、担当したナレーターからも「いつもわからないまま仕事をしているけれど、お役に立てたことがわかって嬉しい!」と返ってきたこともあります。(校了メールは返信無用としているんですが…)

フィードバックから栄養を得て、(いいものをつくっていこう)という土台が強化される。
心を込めた仕事って、その場の一所懸命ではなくて、こういう支えから育ってゆくんじゃないかと思うのです。
宝物は、ちゃんと、本人に渡す。共にいい成長をしていくためにも。

 

なんだか壮大な話になりました(汗)
そしてすごく「うちはすごい」アピールをしている気もします。お恥ずかしい。
でも。
ほんとうの話です。

※こんなところでアレですが、納品後に嬉しいご感想をくださった方々、ありがとうございました。担当ナレーター&運営(わたし)ともに、大きな励みとして共有しています。
あ。お褒めくださいと強要しているわけではありません。必要事項のやりとりができればそれが標準ですので…!

 

[オフィスあるこナレーション音声制作] 運営兼ナレーター 木場本和枝

「なくてはならないアクセント辞典」

ナレーターの仕事道具として、アクセント辞典は必携です。
私の知る限り、NHK出版と三省堂、2か所から出ています。放送業界ではNHK出版のものが多用されているようで、私もNHK出版のほうを使っています。(旧版は電子手帳に内蔵され持ち歩きにも便利でした。スマホアプリにもなっていましたよね。)
※2019.12.25追記:新版待望のアプリが発売されました。(iOSアプリのみ)

※ちなみに私が初めて買ったのは三省堂「新明解日本語アクセント辞典」でした。(複数選択肢があるのも知らずに本屋さんに行き「これでみんな勉強してるのか…!」と笑)三省堂は同業仲間のあいだで「東京アクセント寄りらしいよ」と言われていましたが、もちろん標準アクセントと大きく違うわけでもなく、使い勝手もよかったという印象です。

※もうひとつちなみに三省堂はWeb辞書(大辞林)からもアクセントが調べられます。言葉の横に数字が付いており、[0]=平板、[1]=頭高、[2][3]等で中高…などとアクセント位置がわかります。

標準的なアクセントは、時代とともに変化します。
NHKのアクセント辞典も昨年(2016年5月)大改定され「NHK日本語発音アクセント新辞典」として生まれ変わりました。(その前の改定、白表紙から緑になったのが1998年。時の流れをひしひしと…)

大きな流れとしては、平板化への許容。

  • 「ユーザー」は、旧版で「ユーザー」一択だったのが、第2アクセント「ユーザー」が追加に。
  • 「スピーカー」は、「スピーカー」一択から、第2アクセント「スピーカー」を追加。
  • 「キャラクター」は、「第1:キャラクター、第2:キャ/ラクター」だったのが
    「第1:キャ/ラクター、第2:キャラクター、第3:キャラクター」に。(個人的には頭高で使われる場面がちっともわからないです…)

カタカナ以外では、

  • 「化粧水」が、旧版「ケショースイ」一択が、第2アクセントとして「ケショースイ」追加。ちょっとホッとしませんか?
  • でも落語の「高座」は「コーザ」一択だったのが、第2に「コーザ」が追加。ああーこの平板化は抗ってほしかったかも。

ホッとする系では、つらい尾高&平板からの解放。

  • 「熊」は「クマ」一択だったのが、第2アクセントとして「クマ」OKに。
  • 「甘い」は「アマイ」一択だったのが、第2アクセントとして「ア/マイ」も追加。
  • 「賃貸」に至っては旧版「チンタイ」一択が訂正され、「チンタイ」一択に。ホッ!!

など。
ずいぶん変わりました。編まれた方々の仕事を考えると頭が下がります。
※新辞典のアクセント表記は、音の下がり目に\記号をつけるのみとなっています。(平板は ̄記号。)このコラムの表記ではパッと見てわかりやすいかな?と下がり目のほかに上がるところにも/記号をつけています。慣れている方には邪魔な表記ですがご容赦ください。

しかし。実際の仕事ではアクセント辞典にさからうこともしばしば。業界内で耳慣れた特有アクセントもありますし、エンドクライアントのご判断が最終的な正解、という着地は制作あるあるかと思います。
自分のやり方としては、複数選択肢があるものは出来る限り例を挙げて質問をして、比較した末に決めていただくようにしています。時に「(どうしても勘違いしていらっしゃる…公の場に出すならこちらのほうが…)」とつらい瞬間もありますが、質問すればほぼ皆さん前向きに検討してくださいます。そんなときにも、NHK日本語発音アクセント新辞典は心強い友となってくれているのでした。

新辞典のまえがきに書いてありました。載っていないからといって「間違っている」「おかしい」と否定しているのではなく、「ある程度改まった場面」でも「多くの人に自然に受け入れられる」ものを示すように作ったのだと。

届けたい言葉が、素直に届くように。
違和感なく、伝わりやすくするためのアクセント基準。
自分の標準もあやしいもので、完璧ってなかなかむずかしいことですが、都度、基準を確認しながら臨むようにしています。

新辞典はボリュームアップして、価格もアップ。買い直したときは正直ちょっと震えましたが(笑)これ無しではまともな仕事ができません。
ぜったいに、必要な、道具なのでした。

[オフィスあるこナレーション音声制作] 運営兼ナレーター 木場本和枝

「スタジオ or 宅録。」

ナレーションの収録はスタジオで。という時代から「録音したデータを送ってもらおう」に変わってきています。もちろんまだまだスタジオ収録のほうが多いとは思いますが、宅録に依頼する制作物はド、ドド、ドドドー!と増加の一途。
そりゃ安くて早くてイイ音を通販方式でプロが作ってくれるなら、それで済ませますよね。
ただ、きちんとしたスタジオで経験値の高いナレーターを起用して制作することは、手間とコストをかけただけの価値があるので、おトクおトク旋風に流されないで~とも思います。私が言うのもヘンですが。

宅録の「安く・早く・イイ音を・プロが」もイロイロです。本当はスタジオと宅録を比較するのもおこがましい次元で。(「スタジオ」にもイロイロあるので、ここでは業務スタジオを指しています。)
宅録制作を請け負う側は、機材・技術・知識なども含めて、どの程度のプロなのか。ここがもう少し見えればいいのになと思ったりもしています。…書いてて自分もこわくなってきますが。

スタジオ収録 or 宅録、それぞれざっくりと比較しながらみていきます。

◆音の違い?

当然ですが、スタジオは間違いのない音づくりをしてくれます
そんなにいい音質は必要ないという方もいらっしゃるかと思いますが、録る時点での環境/機材/調整、録ったあとの処理、どれをとっても違います。「スタジオと大差ない」「BGMをかぶせるから関係ない」などはひとつの意見ですが、宅録する側の人間がこれを言ってしまったらダメだよなあと思っています。

*繰り返しになりますがここで言うスタジオとは、設備投資がなされたプロユースのスタジオです。簡易施工の収録ブースなどの場合は、収録時に環境ノイズでストップしたり、編集も宅録レベルの仕上がりということもなくはないです。

一方、宅録の音は、当たりはずれがあります
小さすぎる音、大きすぎる音、遠い音、大小が安定しない音、ノイズが多い音。それは編集でどうにでもなるのでは?という問いには「いいえ」と答えておいたほうがいいのかもしれません。おそろしいレベルの音もあるのです。その音がそのまま納品されてきてしまったら…編集はかなりつらいです。

ナレーターをとりまとめている宅録業者にもいろいろあります。中身をチェック+整音してから納品するところ。これが当たり前な気がするのですが、文章の読み違いのみさらっとチェックして整音はせず転送するところ、さらには何も確認せずお客様へ転送しているところもあります。(たしかに宅録音声を納品しているので詐欺ではないんですが。)

宅録を承ります、と書いて、ホームページにはスタジオで録ってもらったボイスサンプルを掲載しているパターンも多いので。宅録での音を確認のうえ、ご依頼されることをおすすめします

ちなみに、宅録に取り組んでいるナレーターはほぼ独学、もれなく試行錯誤しているはずです。何を知らないのかすらわからないところから、仮のOKラインをどこに引いて進んでいるか。ここで音の仕上がりに差がつく気がします。
改善することがたくさんあるのに本人はこれでいいと思っている。ここで止まると、ハズレの音を売ることになってしまいます。お客様がクレームとして丁寧に教えてくれることもほぼないので、よい方向に変化するためには本人の探求心が必要なのです。

とにかく、勉強を重ねていかないと、知らないままのことばかり。私も勉強しても勉強しても足りていないので大きなことは言えないのですが…

宅録業者もまったくの素人から参入していることもあるので、業界ごとの音量基準やサンプルレートの使い分けなど、大前提がわかっているところに依頼されるほうがいいと思います。

 

◆収録に立ち会うか、おまかせか

スタジオでの収録は、読みのニュアンスなど細かくディレクションしながら進められます。読み違いの有無もその場で録り直しできますし、急に言い回しを変えたくなっても対応可能です。時間的な制約もあるのでどこまでも追及できるわけではないですが、現場でやりとりしながら進められることは大きなメリットです。

宅録の場合は、ある程度のリクエストを伝えたら、あとはおまかせになります。
「思ったとおりに読んでもらえた」「思った以上にわかりやすく読んでもらえた」を目指して収録しますが、「思っていたのと違った」ということもなくはありません。

立ち会った場合には「今のはもうちょっと優しく言ってください」「この部分はもっとゆっくり」などとやり直しながら録れますが、データ納品の場合は後日の修正対応になります。
なお、明らかに変な区切りで読んでいたり、読み間違えていない限り、修正のための再収録は有料になります。無料にしているところもありますが、オフィスあるこでは作業コストとして幾ばくかを頂戴しています。「間違っていないのにダメ出しされたプンプン!」等は申しません、ご希望に近い制作物にすべく尽力しますのでご理解ください。

宅録を依頼されるときは、発注時点で細かく要望を伝えておく、参考になる材料を渡しておく、などのコミュニケーションがあると希望に近づけるかと思います。

なお、宅録は読みを一任するわけですので、読解力/判断力/読み上げる力が、ある意味スタジオ立ち合い収録よりも必要かと思っています。

ナレーターの経験値によって、事前確認の質も変わります
アクセントや文意構成などしっかりと下読みをして、不明箇所については確認をとります。二択三択が考えられる場合は、こんなことまで聞いたらバカだと思われるかもということでも念のため確認しておきます。(自己流で間違えて録り直し発生、完成が遅れてしまったらそのほうがバカだと思うので…)

オフィスあるこの場合は、下読み時点で、用語等が統一されていない場合は確認をとる、言葉の誤用に気づいたときは修正案を出す、音ではわかりづらいものには言い換えの提案をする、などもしています。出過ぎたことかとは思いますが、あれ?と思いながらもそのまま読んで、相手から言われるまで知らなかったことにするのはどうにもソワソワしてしまうのです。

この確認作業は、自分がナレーションするときだけではなく、提携ナレーターに依頼する仲介者の立場でも必ず行っています。[オフィスあるこナレーション音声制作]として、おまかせされたことにできる限り応えていけるよう心がけています。

 

◆手配の労力もコストのひとつ

スタジオ立ち合い収録の場合、各所手配、スケジュール調整が必要です。クライアント、制作スタッフ、スタジオ、ナレーター。制作担当者はそれぞれのスケジュールをすり合わせてブッキングしなくてはなりません。地味に大変です。スケジュールを聞かれる立場で返事に時間がかかってしまうと、ああごめんなさい待たせてごめんなさい、と心の中で詫びています。必要な業務ですが、調整にかかった時間もコスト換算するとばかになりません。
そしてめでたく集合した収録時間。そこにもコストがかかります。収録時間が延びればスタジオ費/エンジニア費もかさんでいきます。

*これらのコストがよくないと言っているのではありません。丁寧な制作ができますし、正しく使えばコストをかけた分、質は向上すると思います。また、MAをスタジオでやってもらえるのも制作の労力面では大きいかもしれません。

宅録の場合は、行程上、納期の折り合いをつけるところで済みます。大至急、収録してほしいという場合にも、ナレーター1人のスケジュール調整だけで済みます。
また、データ納品のため、地理的な制約はありません

 

◆修正や改訂も?

あとから直しを入れたくなったとき。あとから間違いに気づいてしまったとき。

スタジオ収録の場合は、同じスタジオを予約し直し、ナレーターのスケジュールを取り直すことになります。時間もお金も、再びふくらんでいきます。

これに比べて宅録の場合は、小さなコストで済みます
ちなみに念のためお伝えしておきたいのが、作るときは一発で、が理想です。いつでも直せるから~、とポロポロつぎはぎをしたものは、あまりいい結果にならない気がします。

 

・・・以上をまとめます。(書きなぐりの表で汗

わたしごときがズケズケと書き連ねて、内心ふるえあがっていますが…

依頼するにあたり、なにを優先するかによっても選択は変わりますよね。
スタジオ収録 or 宅録、どちらにするか。
そしてどんなところに頼むか。
ご判断のモノサシとなれたら幸いです。

[オフィスあるこナレーション音声制作] 運営兼ナレーター 木場本和枝